オーダースーツは「体にピッタリ合う」という評判が先行しています。
SNSでも「オーダーにして正解だった」「もう既製品には戻れない」という声は簡単に見つかります。
ただ、その声が指しているのは、どのオーダーなのか。本当に必要なのか。
オーダースーツが必要かどうかは、体型とこだわりの2軸で判断できます。
既製品のサイズ展開に収まる体型で、デザインへの強いこだわりもない場合。オーダーは不要です。既製品の方が確実に安く、品質と価格のバランスも取れています。
量販店のパターンオーダーを選ぶ場合は、「フルオーダーと同じ感動は期待しない」「オプション込みの最終金額を事前に確認する」この2点を守るだけで、後悔のリスクは大幅に減ります。
詳しくはこの後、スーツ販売の現場知をもとに、編集部で複数人チェックし、解説しました。
スーツ購入全体の流れや他の悩みは → スーツで迷ったらこれを見ろ|購入前の完全ガイド にまとめています。
結論:オーダースーツが「必要な人」は3タイプだけです
結論から言います。オーダースーツが必要な人は、大きく分けて3タイプです。
① 体型的に既製品のサイズが合わない人
身長が150cm前後または190cm以上
ウエストが68cm以下または120cm以上
あるいは筋トレによって上半身が大きく下半身が細い、肩が非常に張り出しているなど、既製品のサイズ展開からはみ出す体型の方。
② デザインや生地に強いこだわりがある人
オレンジや緑といった特殊なカラー
ダブルスーツ、スリーピースなど、既製品では探しにくいシルエットや仕様を求めている方。
③ セレクトショップと同価格帯で確実に欲しい仕様を手に入れたい人
目的のスーツがあったとして、ビームスやユナイテッドアローズのような7〜8万円帯のスーツを複数店舗回って探すより、同価格帯でオーダーして確実に仕様を揃える方が時間的にも効率的と判断できる方。
この3つに当てはまらない場合。
つまりサイズ感に大きな問題がなく、デザインへのこだわりも強くない場合は、既製品で十分対応できます。
オーダーではなく、まず既製品から見たい方はこちら
→ どこで買う?スーツ量販店 徹底比較ガイド
→ 体型別スーツガイド|低身長・大きいサイズ・細身の選び方
元店員コメント
オーダーショップで働いていた時、「サイズも予算も特に問題ない」という方がオーダーに来た場合、接客しながら正直「この方は既製品でよかったろ」と思うことは少なくなかったです。
でも利益に直結するのでが何も言わない。その構造については後で話します。
フルオーダー・イージーオーダー・パターンオーダーの違いを正直に言う
「オーダースーツ」という言葉は、実際には3種類の異なるものをまとめて指しています。
SNSで「体に吸い付くようにフィットする」と絶賛されているのは、主にフルオーダーに対する感想です。
フルオーダー(ビスポーク)
体を一から採寸し、その人専用の型紙を起こして仕立てる方法。
職人による手縫いが入り、体の左右非対称や特殊な体型にも対応できます。
価格は1着20万円〜が相場で、納期は1〜3ヶ月程度。
正直普通のビジネスユースのハードルとしては、ビスポークは限定的です。
イージーオーダー
既存の型紙をベースにしながら、縦横・体型補正を細かく調整する方法。
パターンオーダーよりも補正できる範囲が広く、「自分専用感」が出やすいです。
麻布テーラー・カシヤマなどが採用。価格帯は1着4〜10万円前後。
パターンオーダー
量販店(青山・AOKIなど)や一部専門店(グローバルスタイルなど)が採用している方式。
既存の型紙の中から最も体型に近いものを選び、袖丈・裾丈・ウエストなど規定の範囲内で微調整します。「イージーオーダー」「セミオーダー」と呼ばれることもありますが、調整できる範囲は限定的です。
| 種類 | 型紙 | 補正範囲 | 価格目安(1着) | 代表サービス |
|---|---|---|---|---|
| フルオーダー | 一から作成 | ほぼ制限なし | 30万円〜 | 専門テーラー |
| イージーオーダー | 既存型紙+補正 | 広い | 4〜10万円 | 麻布テーラー・カシヤマ |
| パターンオーダー | 既存型紙の微調整 | 規定範囲内 | 2〜5万円 | 青山SHITATE・AOKI・グローバルスタイル |
量販店のパターンオーダーは「既製品のサイズ展開を広げた延長線上のサービス」と理解しておくのが実情には近いです。
「体に吸い付くようなフィット感」を量販店のパターンオーダーに求めるのは、サービスの設計と合っていません。
元店員コメント
SNSで見た『フルオーダーのあの感動』を量販店のオーダーで再現しようとしているお客さんは、最終的に期待と現実のギャップに直面します。
量販店のパターンオーダーは悪いサービスではないです。ただ、フルオーダーとは別物。
その違いは確実に認識しておきたいです。
量販店のオーダースーツで「後悔しやすい人」のパターン
現場で見てきた経験から、オーダーにして後悔しやすいパターンには共通点があります。
パターン①「なんとなくオーダーにしてみたい」動機の人
明確な目的がない状態でオーダーカウンターに来た場合、接客の流れで価格が膨らみやすいです。生地・裏地・ボタン・ステッチといったオプションを選ぶ楽しさに引っ張られ、「気づいたら1着10万円になっていた」というケースは珍しくありません。
本来は既製品で4〜5万円で十分だった方が、オーダーにした結果1着10万円を超えることは本当によくあります。
パターン②「サイズに大きな問題がない」のにオーダーを選ぶ人
既製品でほぼフィットしている体型の方がパターンオーダーを試しても、仕上がりは既製品と大きく変わりません。「なんか思っていたより普通だな」という感想になりがちです。
元店員コメント
ほぼ既製品と変わらないサイズ(ゲージの型紙)のオーダーを仕上げて納品したとき、
「これがオーダースーツ!!サイズも身体にピッタリ!今後一生オーダーしか買わない✨」
と喜んでいるお客さんを見て、人間の思い込みって怖いなと感じたことがあります。
あのスーツ、既製品でも同じサイズ感が出せていました。オーダーという「体験」と「プロセス」に満足していて、スーツ自体のフィット感を評価しているわけではなかった。そういうケースは正直よく見ます。
パターン③ 価格帯を誤解している人
量販店のパターンオーダーに「5万円出せばかなり良いものができる」と期待するのは、価格帯とサービスの実態が合っていません。5万円でできることと、10万円のイージーオーダーでできることには、補正の精度と仕立ての手間という点で明確な差があります。
オーダーを検討すべき体型・こだわりの具体的な目安
では、具体的にどういう場合にオーダーを検討すべきか。体型とこだわりの2軸で整理します。
【体型の目安】
以下のいずれかに当てはまる場合、既製品で満足のいくサイズが見つかりにくいです。
- 身長:150cm前後、または190cm以上
- ウエスト:68cm以下、または120cm以上
- 筋トレで上半身がかなりがっちりしており、下半身が細い
- 肩が大きく張り出している・肩幅が非常に広い
量販店によっては大きいサイズや小さいサイズの取り扱いが充実しているブランドもあるため、まず既製品の在庫を確認してからオーダーを検討するのが順序としては正しいです。
→ 詳しくは体型別スーツガイド|低身長・大きいサイズ・細身の選び方で解説しています。
【こだわりの目安】
- 特殊なカラー(オレンジ・緑・鮮やかなブルーなど)
- ダブルスーツ、スリーピースなど特定のシルエット
- セレクトショップで7〜8万円以上かけて探す手間を省きたい
「こだわりが強い人は既製品を探す手間を省くためにオーダーを選ぶ方が最短ルート」というのが現場の率直な見解です。目的が明確であれば、オーダーは合理的な選択になります。
元店員コメント
こだわりが明確な方の接客は、こちらとしても迷いがなかったです。
「これが欲しい」という軸が決まっているので話が早い。
一番難しいのは「なんかいいものが欲しい」という漠然とした状態で来店する方。その状態だと、提案次第でいくらでも高くなる。まぁ正直そういう商売でもあります。
価格帯別の正直な評価|3万・5万・10万・20万で何が変わるか
3万円台(量販店パターンオーダー)
青山・AOKIのパターンオーダーの最低価格がこの帯域。
エントリー価格はともに1着31,900円〜です。
選べる生地・オプションの幅は限られますが、既製品と同価格帯でシルエットの微調整や生地選びの体験ができます。
「とりあえずオーダーを体験してみたい」「サイズが既製品からわずかにはみ出している」という方には向いています。
ただし、オプションを選び始めると簡単に5〜6万円になります。
追加前提で考えておく方が現実的です。
5万円台(専門店パターンオーダー・イージーオーダーの入口)
グローバルスタイル(1着単体41,800円〜・2着同時購入で1着あたり約23,500円〜)
カシヤマ(2着49,500円〜)がこの帯域。
カシヤマはイージーオーダーを採用しており、補正の細かさではパターンオーダーより優位です。ただし実際のところ、エントリー価格で仕上げるお客さんは少数派。
「2着で〇万円〜」という広告と実際の支払いは、営業には乗らない覚悟とかなりの妥協を必要とすることを念頭においてください。
10万円前後(専門店イージーオーダー)
麻布テーラー(49,500円〜)がこの帯域に入ります。
国内自社工場での縫製、ウール100%エントリー生地、3,000種類以上の生地ラインナップが特徴です。
満足度が高いのは1着8〜10万円程度の価格帯という声が多く、この帯域で仕立てるなら専門店の方がコスパは出やすいです。
20万円以上(フルオーダー・ハイエンドイージーオーダー)
この帯域まで来ると、量販店のオーダーとは別の話になります。
職人の手縫い、体型補正の精度、生地のグレードすべてが変わります。セレクトショップで7〜8万円のスーツを「何となくおしゃれなもの」として買うより、この帯域で自分仕様を作る方が長い目で見て納得感は高いです。
元店員コメント
「5万円のオーダーと5万円の既製品、どっちが良いか」と聞かれたら、サイズが合っている既製品の方がいいです。同じ予算なら既製品の方が生地と仕立てに予算が集中している。 オーダーの価値が出るのは、既製品では解決できない何かがあるときだけです。
なぜ店員はオーダーを勧めるのか|元店員が本音を話す
スーツ量販店の店員がオーダーを勧める動機は、大きく2つあります。
第一の理由:お客さんのため
体型的に既製品では難しい方に、体に合ったものを提供したいという動機は本物です。これは接客の本来の仕事です。
第二の理由:客単価を上げるため
5万円の既製品で十分なお客さんを、オーダーに誘導することで10万円・15万円と単価を上げやすくなります。量販店で10万円の既製品を売るのは難易度が高い。
でも「カスタマイズの楽しさ」「体に合う」という文脈を作ると、同じ10万円でも出してもらいやすくなる。この構造は現実としてあります。
さらに、歩合制・業績評価という仕組みが、店員が無意識にオーダーを優先して提案する状況を作ります。
元店員コメント
既成の量販店でのコンクールで入賞したとき、振り返ったらオーダーばかりを売っていました。もちろん単価が高くなるから。
当時は「お客さんに喜んでもらっている」という感覚もあった。でも正直に言えば、サイズに問題がないお客さんにまでオーダーを勧めていた時期も全然あった。数字を作るためです。
現職から離れた今だから言えます。「既製品で十分なサイズの方は、既製品を選んでください」
量販店オーダーと専門店オーダー、どちらを選ぶべきか
| 量販店オーダー(青山・AOKI等) | 専門店オーダー(麻布テーラー・グローバルスタイル等) | |
|---|---|---|
| 仕立て方式 | パターンオーダー中心 | パターン〜イージーオーダー |
| 生地の選択肢 | 数十〜100種類前後 | 1,000〜5,000種類以上 |
| 選べるシルエット | 限定的だが必要十分 | より拘りのあるシルエットやデザインも選べる |
| 体型補正の精度 | 規定範囲内の微調整 | より細かい補正が可能 |
| エントリー価格 | 31,900円〜 | 41,800円〜(1着単体) |
| 向いている人 | オーダー初心者・サイズが少しはみ出す方 | こだわりが強い方・体型補正が必要な方 |
量販店のオーダーは、既製品のサイズが「もう少しだけ合えば」という方や、初めてオーダーを体験してみたいという方向けです。
デザインや生地への強いこだわりがある場合は、最初から専門店に行く方が結果的に満足度が高くなります。
元店員コメント
量販店のオーダーは悪くないです。ただ、セレクトショップで似合うものを探し回るより「オーダーの方が早い」という層には、専門店の方が向いています。 量販店のオーダーで一番ハマるのは「サイズが少し特殊で、デザインへのこだわりはそこまで強くない」方。そこが一番、価格と満足度のバランスが取れます。
よくある質問
Q. 量販店のオーダースーツはどれくらいで仕上がりますか?
青山やAOKIのパターンオーダーは最短で約2週間が目安です。
急ぎの場合は既製服にシフトチェンジし「当日仕上げの裾上げのみ可能かどうか」という確認をあわせて行うと良いです。オーダーで納期を早めることは不可能だと思っていいです。
オーダーの場合は事前の来店予約をしておくと当日の採寸がスムーズです。
→ 急ぎでスーツを用意したい方は礼服・喪服を急いで揃える方法|量販店の当日購入完全ガイドも参考にしてください。
Q. 量販店のパターンオーダーは「イージーオーダー」と同じですか?
名称はブランドによって異なります。厳密には「イージーオーダー」は具体的にCADなどを用いた細かい補正ができる仕立て方式を一般的には指します。
「パターンオーダー」は既存型紙の微調整にとどまります。
量販店がサービス名として「イージーオーダー」と呼んでいるケースでも、実態はパターンオーダーに近いことが多いです。
Q. 就活スーツや入社式用にオーダーは必要ですか?
既製品のサイズが合っている場合は不要です。
元販売員としては就活・入社用のスーツはまず既製品で一式揃え、オーダーはその後の必要性に応じて検討するので十分です。
→ 詳しくは就活スーツと仕事用スーツは兼用できるかで解説しています。
Q. パターンオーダーと既製品、どっちが安いですか?
エントリー価格だけ比べると、量販店のパターンオーダーは31,900円〜で、既製品の3〜4万円台と大差はありません。ただし、オプションを選び始めると5〜6万円以上になることが多いです。
また、パターンオーダーの3万のスーツと既製の3万のスーツを比べると、明らかに耐久性面的にも見栄えとしても高級感があるのは3万のスーツです。1着当たりの必要経費を考えると一目瞭然です。
サイズに問題がない場合は既製品の方が確実に安く良く済みます。
Q. グローバルスタイルやカシヤマは量販店と何が違いますか?
オーダー専門店として生地の選択肢が圧倒的に多く、シルエットのバリエーションや体型補正の幅が広い点が主な違いです。
エントリー価格は量販店とほぼ同水準ですが、専門性の高いスタッフによるカウンセリングが受けられるため、こだわりがある方や初めて本格的なオーダーを試したい方に向いています。
ただ、割高にもなり易いのが難点です。
オーダーを検討する前の確認リスト
オーダーを検討する前に、以下を確認してください。
□既製品で試着して、サイズが合わないと感じているか
□サイズが合わない部分は「肩幅・胸囲・ウエスト・身長」のどこか
□デザインや生地に「既製品では叶えられない」具体的なこだわりがあるか
□予算は既製品の1.5〜3倍を準備できるか(オプション込みで現実的な金額を想定する)
□納期は2〜4週間待てるか
上記の確認後、店頭では以下のように伝えると目的がブレにくいです。
店員に伝える一言スクリプト(コピペ用)
「既製品のスーツでサイズが合いにくいところがあって、
パターンオーダーを検討しています。
オプションなしのベース価格と、
仕上がりの差がどの程度か確認したいです。」
「特殊なシルエット(ダブル・スリーピース等)を探していて、
既製品では見つからなかったのでオーダーを検討しています。
予算は○万円前後を考えています。」
これを最初に伝えておくと、オプション提案のペースをコントロールしやすくなります。
「本物のオーダー」をちゃんと試したい人へ|オーダースーツSADAという選択肢
この記事を読んで「それでもやっぱりオーダーが気になる」という方に、一度相談してほしいお店があります。
オーダースーツSADAは、全国に展開するオーダースーツ専門店です。量販店のパターンオーダーとは異なる本格的な仕立てを、比較的手の届きやすい価格帯から体験できます。
「買うかどうかまだ決めていない」という段階でも来店相談ができます。
- 予算感の相談(いくらあれば何ができるか、の確認だけでもOK)
- シルエットの相談(細身・ゆったり・ダブルなど好みのシルエットを試着して確認)
- 生地の相談(ウール・ポリ混・季節感など、自分の使い方に合う生地を選ぶサポート)
オーダースーツを「体験」として試してみたい方にも、本当に必要かどうかをプロに聞いてみたい方にも、まずは話だけ聞いてみることをおすすめします。
予算・シルエット・生地の相談をしてみる
元店員コメント
「どこで最初のオーダーを経験するか」は結構大事で、最初に量販店のパターンオーダーを体験すると、それが「オーダーの基準」になってしまうことがある。 本格的なオーダーを試したいなら、最初から専門店に行く方が後の選択肢が広がります。
まとめ|「オーダーが必要かどうか」の判断軸
オーダースーツが必要かどうかは、体型とこだわりの2軸で判断できます。
既製品のサイズ展開に収まる体型で、デザインへの強いこだわりもない場合——オーダーは不要です。既製品の方が確実に安く、品質と価格のバランスも取れています。
量販店のパターンオーダーを選ぶ場合は、「フルオーダーと同じ感動は期待しない」「オプション込みの最終金額を事前に確認する」この2点を守るだけで、後悔のリスクは大幅に減ります。
本格的なオーダーを試したいなら、最初から専門店へ。量販店のオーダーを経験してから専門店に行くより、最初に専門店でカウンセリングを受けた方が判断がしやすくなります。
まずは量販店の既製品から見たい方はこちら → 洋服の青山 楽天市場店 → AOKI 楽天市場店 ※楽天ポイントが使える&貯まります。
元店員コメント
販売員として正直に言います。サイズが合っている人には既製品を勧めたかった。でも売上の構造がそれを許さない時期があった。 この記事はそのジレンマの裏返しです。「必要かどうか、ちゃんと考えてから店に入ってほしい」それだけです。
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